6月13日。
本日は長崎に寄港。
♬うす紫の街。
軍艦島に上陸してみたかったので、事前に「軍艦島コンシェルジュ」でツアーを予約しておいた。
ダイヤモンド・プリンセスが停泊する港はグラバー邸などの観光地の至近距離で「コンシェルジュ」の出発港にも徒歩5分程度で着いた。
屋形船程度の大きさの船に乗って、島まで45分くらい。
船内では島の歴史をまとめた映像を流してくれるので、予習なしで参加した人も楽しめるはず。
島に接近中。
島内はごく一部しか立ち入れないので、まずは周囲を船でまわって見物する。
ガイドさんが池島に暮らしていた女性で、リアル炭鉱ライフについて話してくれて面白かったよ。
上陸時には、船をコンクリートの階段に横付けして、簡易的な橋をかけて渡る。
この日は穏やかな波だったけど、それでも橋は1メートルくらい上下していて、スタッフが必死にホールドしていた。
そういう事情なので波が高い日は島に上陸できないらしい。
上陸すると柵付き歩道が整備されていて、見学者はそこから見物する。
崩れた建築の残骸の上に草が生えていて、まるで近代建築ベンメリア(アンコールワット遺跡のひとつ)といった風情。
そういえば、ベンメリア遺跡は壊れた建築の中にガンガン侵入してよじのぼったりできたけど、あんな風だと破壊が進むんじゃないかしら。観光客が少ないから遺跡触り放題、という状態は一番楽しいけどね。
客が増えると、どうしても遺跡は過剰に保護されるようになり、まるで美術館の展示品のようによそよそしくなってしまう。都会の公園には人がたくさん来るから「芝生を踏むな」「花をとるな」「騒ぐな」といった規制でガチガチになるのと似ている。
写真は日本最古のコンクリートマンシヲン。築100年。吹き抜けのあるモダンな帝都建築だったらしい。
軍艦島って、観光地として整備される前は、不法上陸して遊ぶ人がけっこういたらしいですね。
さぞ面白かっただろうな〜。
30分ほど見物して、また船に戻る。
船内では唐突にカステラアイスの物販が始まって、ほぼ全員が購入。
美味しかった。
「軍艦島コンシェルジュ」はアットホームな雰囲気で、みんなで良いツアーを作ろう、という気分が伝わってきて好ましかったよ。おすすめです。
次は夫のリクエストで孔子廟へ向かう。
これも徒歩5分程度で到着。
この頃から異常な眠気に襲われて、孔子廟ではずっとベンチに座って目を閉じていたので、あまり記憶にございません。
軍艦島ツアーの船は揺れると聞いていたので、強い酔い止めを飲んでいたのが原因だと思う。
孔子廟から徒歩3分程度で着く「みらく苑」にてちゃんぽんをいただく。
ここはちゃんぽんの名店の一つ。
とても美味しかったのに、とにかく眠くて、食べながら永眠しそうに。
それでもせっかく長崎に来たのだから、頑張ってグラバー邸に行きましたよ。
ここから徒歩5分くらいだしね。
大浦天主堂。
登る気力ナッシング。
グラバー邸は屋外エスカレーターが整備されているので、なんとか丘の上まで到達。
屋敷の離れを改装した「自由亭カフェ」でコーヒーを飲む。しかし、ここでも飲みながら永眠しそうに。
窓からダイヤモンド・プリンセスが見えるね。
長崎っていいよね。不思議な居心地の良さがある。
美輪明宏様が「長崎は最先端の国際都市。東京みたいなイナカと違ってガイジンもオカマも差別されなかった」とおっしゃっていたけれど、やはり歴史に根ざした大らかさがあるのかもしれない。
出島を原型のまま遺して欲しかったな。
三菱の造船所がたくさんあったから原爆の投下地にされたのかな。
いま長崎で観光のメダマになっている施設は全部三菱製だけどね。軍艦島を筆頭とする産業革命遺産もグラバー住居群もみんな三菱御用。
グラバーさんちの夕飯は食品サンプル。ホコリかぶってるけど、かわいい。
当時の正餐を再現したものなのだそう。
嗚呼、それにしても、もう立っていられない。
まだ滞在時間はあるけど、限界なので船に戻ることにする。
部屋に戻るやいなや私は永眠したので知らなかったんだけど、
地元の学校のチアリーダーが来て、クルーズ船の乗客に向けてお別れの舞を踊ってくれたそう。
クルーズ船が離岸するとき、こんな風に地元の人々がお別れの挨拶をしてくれるんだけど、
それが毎回なかなか素敵なのだ。
夜はブッフェで夕飯を済ませる。
本日はモンゴリアン・ナイトらしい。
毎日趣向が変わるので、飽きない。
それに結構美味しい。
正式なディナーはまずいので、ダイヤモンド・プリンセスではいつもブッフェで食事をすることにしている。
食事後はイベントにも参加せず、部屋に戻ってくつろぐ。
バルコニーに出たら、月の道が出現していた。
クルーズは寄港地も楽しいけど、船に乗らないと経験できない海の色んな表情にこそ感動があるよ。特に夜の海は怖美しい。
茫洋たる漆黒の海を眺めていると、なぜか飛び込まなくてはいけないような脅迫感を感じるんだよね……。そういう衝動ありませんか??
あまり長く眺めていたらものぐるおしくて気が狂うかも!
星空もすごく綺麗だけど、それもまた怖美しい感じで長くは観ていられない……。
なんというか、都会モンはひ弱なんでしょうね。
毎日管理された人工物にばかり囲まれていて、自分が生きている宇宙のダイナミズムを忘れがち。だから尊大になって「子供の泣き声がうるさい」とか幼稚な自己主張を始めたりするんじゃないかしら。
バルコニーから前方を見れば操舵室が見える。ハンマーヘッドのように船の先頭の左右に突き出しているのだ。夜間は暗闇の中に機械の灯だけが見えて無性にカッコいい。
カッコいいといえば、白いユニフォームを着た高級船員萌えということもある。しかし残念ながら、実物の高級船員さんたちは太っちょのオッさんで全然カッコよくないんだよね…。
シャーロック・ホームズの「僧坊荘園」的な高級船員とのアバンチュールみたいなの、絶対なさそう。
昼間盛大に昼寝したせいで眠れない。
そこで部屋のテレビで無料の映画を観ることにする。
「クラシック・セレクション」の中には大好きな「めまい(1958)」があるじゃないですか!
さっそく鑑賞。
それにしてもクラシック・セレクションのラインナップが微妙にヘンだよ。
ヒッチコックなら一般受けは「裏窓」とか「北北西」とかじゃないかと思うんだけど「めまい」。そして「ゴッドファーザー」とか「ティファニーで朝食を」の隣になぜか「フットルース」が。
でも、これって実は繊細なマーケティングの結果なのかな?マーケティングを全てに優先させるアメリカの会社だし。
あと小説の朗読チャンネルもあるんだけど、すべてハーレクイン調。
“Once upon a night at sea”みたいな。客層がバアさんメインだからか?
ところで部屋のテレビはsamsungなんだけど、画質がチープでひどかった。
「ティファニーで朝食を」がsamsungで観ると韓流の安っぽいドラマみたいに見えて驚いたよ。画質とかトーンって作品において大きな意味があるんだな、と改めて認識。