4月11日 アグラ
一晩寝て起きたら、だいぶ精神が落ち着いた。
あらためて無事に生きていられたことの幸運に思いをはせる。
同時に、どうやら昨夜ルームサービスで頼んだ何か、たぶん紅茶のミルクだと思う、にじんわりヤラレタような胃腸感。劇的な症状ではないんだけど、お腹が痛い&気持ち悪い。
ヒルトンはダメホテルだけれど、朝食の会場はわりと良かった。めっちゃアメリカンだけどね。
ご覧なさい。フレンチトーストを注文したら、中にグレープジェリーが入っているよ。これはアメリカントーストだよ。
朝食はコレくらいしか食べられない。
ヤクルトもない。
11:00 マンシー氏が迎えに来る。マンシー氏も一晩寝て少し元気になった様子。新しい車に交換してタイヤも交換したそう。そして今後は時間がかかっても低速走行で行きましょう、と約束する。昨夜激突した際にカメラを車のシート下に落としてしまったのだが、それもちゃんと拾って持ってきてくれた。ただし濡れた折りたたみ傘と同じ袋に入れてな。気が利いているような、やっぱりインド人のような。
本日はタージマハルとアグラ城を見物の予定。
大気汚染から少しでも守るためにタージマハルの周囲は車進入禁止。そしてインド1の観光地なので、門前は物売りや詐欺師が飽和状態である。ひ弱な日本人が歩いて安全に場内へ入るのは難しいと判断したマンシー氏は、知り合いのガイド女性を無料で門まで付き添わせてくれるという。
車はマンシー氏が宿泊しているホテルに泊めて、そこで日本人の大学生O君と合流した。O君は春から医者として国立病院に勤務する優秀で礼儀正しい若者であった。アジア周遊の一人旅をしている最中だという。久しぶりに清潔感のある知的な日本人と交流できて、まるで高級な煎茶を振舞われたかのような爽やかさであった。
O君と我々はインド人の女性に引率されてタージマハルに向かった。本日は祝日で、いつも混雑しているタージマハルが本日はさらに極限的に混雑しているという。門に向かうだけで、車やバイクや物乞いや物売りを敏捷に避ける必要があり確かに大変。入場のための身体検査なども、どこが列なのかよくわからない。ガイド女性のおかげで外人専用列を利用してスムーズに入場できた。
ガイド女性は写真もどんどん撮ってくれる。タージマハルをつまむポーズなど、次々に要求してくる。そして彼女は先に帰ってしまう。帰りは自力で戻らなくてはいけない。チップを100ルピー渡した。
とにかく人が多い。
角砂糖に群がるアリみたい。
内部に入るための行列が、霊びょうの周囲をぐるりと囲んでいる状態。仕方ないので最後尾に並んでいたら、日本語を話すインド人が「日本人ですか?外国人はこちらからすぐ入れますよ!」と教えてくれた。日本語を話すインド人は全員詐欺師なので、最初は疑っていたんだけど、彼は日本語ができる親切なインド人だったらしく、本当に外国人用の入場口に案内してくれた。チップ要求もなし。外国人用のチケット価格はインド人の30倍くらいなので、外国人は列に並ばなくて良いことになっているらしい。
内部は撮影禁止。満員電車みたいな混雑。警備員がムチで打つんじゃないかと思うような剣幕でカオティックな民衆を制御している。何が何だかわからないうちに出口に吐き出される。
あちこちで修復作業中。
タージマハル、素晴らしいと思うんだけど、やはり人が多いと味が薄くなるよね。
子供に見えるのか、おもちゃ売りに付きまとわれるO君と、歩きにくい道を先ほどのホテルまで戻る。
ここ、よく見ると可愛いホテルだね。トリップアドバイザーを見たら、割と高評価だし。レストランで一休みしたけれど、お客さんは欧米人メインで、食べ物も美味しそうだった。トイレも洋式でまあまあ綺麗だった。おトイレお兄さんがいるのでチップ必須。
O君とはここで別れて、我々はアグラ城へ向かう。車で15分程度。
ここもかなりカオティックな地域で、駐車場から信号のない狂った交差点を渡らなくてはいけなくて、すごく怖かった。
なんとか門に到達。
チケット売り場ではお釣りを500ルピーごまかされた。「間違ってるよ」と指摘したら「おや、そうですか」とすぐに返してくれたので、あれはいつもやっている手口なんだと思う。間抜けそうなガイジンが来るたびにやって、例えば1日に10人だませば5000ルピー儲かる。それを1月やれば150000ルピー!日本の価値観だと60万円くらいかな。
アグラはインドの都市の中でも最もガサガサしたガラの悪い地域と言われているけれど、そこかしこにそういう気配が漂っている。タージマハルだけ見て、さっさとよそに移動すべきだね。
こういうの見すぎて感動がなくなってきた。
タージマハルを建てた王様が息子に幽閉された塔は良かった。
死ぬまでこの景色をぼんやり眺めて過ごしたんだそう。
原住民の後ろにぴったりひっついて恐ろしい交差点を渡り、車に戻る。
6歳くらいの男の子が駐車場で付いてきてドアを閉めさせてくれなかったので、10ルピーあげた。その子の顔は全ての感情を放棄したような無表情であった。
インド人って頭良さそうな人が多い。もし貧困による教育の不平等をなくして、カースト的発想を完全払拭すれば、いろんな分野で世界一になるんじゃないだろうか。すごく機会損失していると思う。それはそのまま今の日本にもあてはまるけど。
本日はアグラの市長選挙だったらしく、あちこちで当選祝いをしている。ホーリーがあさってなので色粉をかぶった人もチラホラ。あれ、ちょっとかぶってみたい。
*追記
ホーリーに参加したい日本人のために記しておく。タージマハルで同行した医学生のO君は、バラナシでホーリーに全力参加したという。その結果、何らかの感染症にかかり病院で点滴を打つはめになったそう。原因はおそらくホーリーでみんながぶっかけてくる色水。色水はそのあたりの水たまりの水などを使うらしく、それが粘膜や口に入るといかなる病原菌に感染するかわからないとのこと。ご参考までに。
もうホテルに帰るつもりだったのだけれど、マンシー氏にスパイスを買いたい、と話したら、彼の幼馴染がスパイス屋であるから、そこに行くかね?と提案される。
ヒマラヤ・スパイスというお店。めっちゃローカル感があって良い。
漢方薬屋みたいな雰囲気で、店内すごい臭気。
色んなスパイスの匂いを嗅がせてくれたけれど、塩ラッシーにも入れるHingというスパイスが特にモーレツであった。大将が真剣な顔で「この袋を開けたらお前の家だけでなく両隣の家まで臭いが充満するぞ」と警告してくれたが購入。
大将のおじいちゃんの秘伝レシピだというチャイをその場で煮立ててくれた。
全部で5000円分くらい購入。
この店ではスパイス類はほとんど全て原形の状態で売っている。スパイスは潰した後、2日も経てば死んでしまうのだそう。だから必ず調理する日に潰すように、と教えてもらった。
もしかしたら、これがインドのインド料理が美味しい秘訣なのかな。
日本に比べると安いのでいっぱい買ったけれど、コレ本当はいくらだったんだろうな…。インドに限らないけれど、定価表示がないような買い物って難しいよね。自分が納得できれば良い、と私は考えるようにしている。
ホテルに戻って、スパイス大量購入をフェイスブックに投稿したら、インドによく出張する友人から「空港で没収されないように気をつけよ」という忠告があった。
よく調べてみたら、インド政府はスパイスの輸出に規制を設けているそう。低品質なスパイスやカビ菌の入ったスパイスが輸出されることを避けるために、指定された検査を受けたものしか持ち出せないのだそう。購入したスパイスの一部は輸出品質と記載されていたので、それは大丈夫なのだと思うけれど、大将がパッキングしてくれたやつは怪しいかも。
最終的にスパイスは2つのスーツケースに分散して持ち帰った。幸い空港で没収されることはなかったけれど、スパイスの持ち出しにはそういうリスクもある。
この夜も懲りずにルームサービスを頼んだ。
ただし、今回はアメリカンなハンバーガープレート。そしたら結構美味しかった。アメリカンなホテルではアメリカンな料理を頼むべきだね。