ド底辺SATCによる3K労働映画「ゴーストバスターズ(2016)」

「ゴーストバスターズ(2016)」がすごく良かったよ!1984年のオリジナル・ゴーストバスターズよりずっと面白い!

エクソシストやシャイ二ングなど、過去ホラー作品へのオマージュが豊富で、前作キャストもチョイ役でウロウロ出てきます(1984年にゴーストバスターズが事務所として使っていた倉庫を借りようとしたら、あの倉庫が実はインダストリアル風味の超オシャレ物件で、高すぎて借りられないっ、というネタが好き)。

この10年くらい、ハリウッド映画における流行は「男女同権」「人種同権」。女が男と対等に闘う、だけでは飽き足らず、女が闘って男を救う物語も多い。そしてボスは黒人。個人的にこの偽善的な作法がちょっと苦手なのだ。
だから、女4人のゴーストバスターズと聞いた時はちょっとイヤな予感がした。また「女は美しい上に男より強いんだからねっ!」系シャカリキ物語なんじゃないかと思ったのだ。

しかし、本編を観てその不安は爽やかに払拭されたよ!
今回のゴーストバスターズのメンツは欲求不満喪女、ADHD、ヲタクメガネ、デブ。美しくないし強くもないしはっきり言って女子的カースト最底辺の女たち。しかし、そのド底辺SATC4人組が、それはキラキラと輝いているのだ。コワイ・キタナイ・キケンな仕事=ゴースト退治という底辺労働をしながら。
そこには窮屈な「フェミズム」とか「男女平等」とか、そんな主義主張が介入する余地はなくて、彼女たちからは、ひたすら仲間と助けあって使命を達成する喜びしか感じられない。それが結果的には「マイノリティの権利」の本当の意味について考えさせるような優れた構造。

そうそう、ケヴィンというルックスの良いおバカ男がゴーストバスターズ事務所の受付嬢として出てきて、3K職場に華を添えています。このキャラは一歩間違うと「女は男より賢くて強いんだからねっ!」装置になってしまうと思うのだが、ケヴィンには思いがけない活躍の場面が用意されていて、結局男対女の構図にはならないようになっている。っていうか、空っぽのケヴィンこそ最強だった的な展開なのだ。そこは観てのお楽しみ。

それにしても、ハリウッドってこういうオシャレな娯楽作品作るのうまいよね!深い内容はないんだけど大人っぽくてセンス良くて「いいじゃん!かっこいいじゃん!おもしろいじゃん!」みたいなノリ。
映画のラストで巨大オバケがNYの街を破壊しながら闊歩する姿を観ているうちに「シン・ゴジラ」と「ゴーストバスターズ」は日米の優れた娯楽映画の象徴なんじゃないかなと思った。日本のすごい作家さんって、精神は厨二のままなんだけど、死ぬほど思索してあらゆるディテールに魂を込める。そしてオシャレっぽくはないんだけど「美」を徹底的に追及する。一方アメリカのすごい作家さんって、精神は35歳くらいになっているんだけど遊び好きで、哲学的思索よりもユーモアで勝負する。そして「美」ではなく「センスの良さ」を志向する。
どっちも大好き!

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