NHKアナザーストーリーズ「山一破たん たった1つの記事から始まった」

NHKアナザーストーリーズの「山一証券破綻」の回を観た。
アナザーストーリーズ、最近かなり気合いの入った取材が多くて目が離せん。

p1
*NHKよりイメージ転載

「悪いのは我々経営陣であって、社員は悪くありませんから」と号泣会見して有名になったこの社長さんって、破綻3ヶ月前に不正を知らされないまま唐突に抜擢された人だったんだね。ずっと営業畑にいて、いわゆる社長レースには全く関係ない方だったそう。それが唐突に社長に抜擢されたのは、前経営陣のドンが、自分が外野から最も操縦しやすいコマとして任命したということだったらしい。うーむ。悪いやつらはトンズラして、善良な人が突然責任を取らされるパターンって、ホントよくあるよね。ニュースにはならないけど、身近な人たちの内緒話でそういう話はけっこう聞く。

みんな、今そこにいる「当事者」を罵倒したり非難するけど、組織はそんなに単純じゃないよ。「悪いやつ!悪い組織!糾弾すべし!」という号令とともに非難したり、内部事情を暴露する行為も、本当に良いことなのかどうか……。玉虫色のゾーンで誰も傷つかないように慎重に物事を進めている最中に、外部者が正義の鉄槌をくだすことで、何もかも台無しになって大勢の人間が不幸になることって多いような気がするのです。

番組では、この社長と、当時のトップ営業マンと、山一の不正をスクープした記者、の三人の視点で当時を振り返る。生贄にされた社長は、水面下で大蔵省と会談したりして必死に会社と社員たちを守ろうとする。トップ営業マンは、会社が破綻すると判明した後、泥臭い営業力を発揮して自分の部下の新しい就職先を全員分世話する。危機から目をそらさないで最善を尽くそうとする彼らの姿には感動させられる。かたや、スクープ記者が自己顕示欲もしくは正義感のために暴力的に暴露記事を書きまくる姿がなんとも下品に見えてね。彼には彼の使命があるんだろうけど、報道というものについて考えさせられたよ。理想論だけれど、報道は記者の名誉や雑誌の売上のためではなく、多くの人々の利益のためのものであってほしいと思うよ。

それにしても、山一みたいな古い体質のThe日本企業って、まるで「藩」みたいだと思った。トップ営業マンなんて、未だにカラオケ行くと♪サンドイッチマンという歌詞を♪山一マン♪山一マンという替え歌にして嬉しそうに歌っているんだよ。そういう企業への忠誠心みたいなものって、今の会社員にはもうないんじゃないかしら。

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