マタギ奇談 (工藤 隆雄・著)

マタギに憧れているドーラ(うちのネコ)に読んであげようと思い買ってみたら、めちゃ面白かった。柳田國男的にマタギたちから聞いた「奇妙な話」を寄せ集めたもの。

昭和のUMAブームの際に「雪男を探す」テレビ企画で唐突にヒマラヤに連れていかれたマタギたちの話、熊を殺したらまだ乳離れしていない子熊が現れてその子供らの親代わりになるマタギの話、マタギの掟を破った結果起きた謎の集団死の話、世界遺産に登録されたせいで白神山地から追い出された「最後のマタギ」の話などなど。興味深くて明け方まで一気読み。

八甲田山雪中行軍の案内をしたマタギの話も超面白い。映画化された「八甲田山死の彷徨」は大衆受けを狙ったちゃらい小説で、

実はその少し前に事実を正確に調査したルポ「吹雪の惨劇」が存在しており、八甲田山で起きた事象には美談のかけらもなかった事が明かされる。現場にいたマタギが30年間口を閉ざしていた真実にも震える。

マタギは山の中でしばしば怪異に遭遇する。部外者にとっては迷信のように見える「マタギの掟」は、持続可能な環境保護の知恵であると同時に、彼らを怪異から守るための呪術的な意味を持っている。マタギは漢字で「又鬼」と記す。かっこいい…。この世とあの世をマタグ者という解釈もできる。

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